B型肝炎ウイルスが広まった集団予防接種等とは?給付金についても解説

「集団予防接種等が原因でB型肝炎ウイルスが広まったと聞いたけど、なぜそんなことが起きたの?」
厚生労働省によれば、幼少期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎に持続感染してしまった方が、最大40万人以上いると推計されています。

なぜ、集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスが広まってしまったのでしょうか。

その原因は、1988年に注射筒の交換に関する指導が国から行われるまで、注射針や注射筒が使い回されていたことにあります。

このコラムでは、B型肝炎ウイルスの感染が拡大してしまった理由や、B型肝炎訴訟などについてアディーレの弁護士が解説します。

集団予防接種等でB型肝炎ウイルスが広まった理由

B型肝炎ウイルスが蔓延してしまったのは、主に集団予防接種等の際、注射針や注射筒が使い回しされていたことが原因です。

現在では、予防接種を受ける人ごとに注射針や注射筒を交換するのは当たり前となっています。
なぜなら、使用済みの注射針や注射筒にウイルス等が混じった血液がついていると、その注射針などを使い回すことで他の人にウイルス等が広まってしまう危険性があるからです。

しかし、後述の通り、1988年(昭和63年)に国の指導があるまでは、集団予防接種等の際、注射針や注射筒の使い回しがされていました。

その結果、この指導より前に集団予防接種等を受けた人のなかでB型肝炎ウイルスへの感染が増え、ほかの感染経路なども介してより多くの人に広まっていったのです。

【国の指導の経緯】

年数国の対応など
1948年(昭和23年)予防接種等が義務化された。
注射器(注射針または注射筒)の使い回しが行われていた。
1950年(昭和25年)ツベルクリン反応検査・BCG接種については注射針の交換を指導する通達が出された。
しかし、周知徹底が十分になされず、現場では注射器の使い回しが行われていた。
1958年(昭和33年)その他の予防接種についても、注射針の交換をするよう国から指導が徹底された。
→この指導より前までは、注射針の使い回しがされることがあった。
1988年(昭和63年)注射筒を交換するよう国から指導が徹底された。
→この指導より前まで、注射筒の使い回しがされることがあった。

B型肝炎ウイルスが広まった可能性のある集団予防接種等の種類

集団予防接種等とは、自治体が主催するもので、学校や区役所など広い場所に一同に集まって受ける予防接種等のことです。そのため、病院で個別に受ける予防接種等とは異なります。

主に次の集団予防接種等で、B型肝炎が広まった可能性があります。

・種痘
・ツベルクリン反応検査
・BCG
・ジフテリア
・百日咳
・二種混合
・三種混合
・日本脳炎など

集団予防接種等以外の感染経路

集団予防接種等における注射器の使い回しのほかにも、B型肝炎ウイルスの感染が広まる経路はあります。

(1)母子感染

B型肝炎ウイルスに感染した母親の産道や胎内で子どもに感染してしまうことを母子感染といいます。
なお、1986年以降、B型肝炎の母子感染防止事業によって、B型肝炎ワクチンなどの接種が実施され、現在では新生児への母子感染は大幅に減少しています。

(2)血液や唾液の付着する道具の使い回しによる感染

次のような血液や唾液の付着する道具を使い回すことで、B型肝炎ウイルスの感染が広まる可能性があります。

  • ピアスの穴をあける道具
  • カミソリ
  • 歯ブラシ
  • 覚せい剤使用時における注射器
  • 入れ墨針

(3)性交渉による感染

B型肝炎ウイルスは、人の精液、膣分泌液にも含まれます。そのため、B型肝炎ウイルス感染者との性交渉も感染経路となり得ます。

(4)輸血による感染

輸血もB型肝炎ウイルスの感染経路の一つです。
もっとも、現在では、輸血時のスクリーニングにより、輸血による感染は大幅に減少しています。

(5)父子感染や集団生活における感染

さらに、汗、涙、唾液、粘液、排泄物にもB型肝炎ウイルスが存在することが報告されています。
そして、これらを媒介として人に感染することがあるとの報告があり、父子感染などの家族内感染や集団生活おいても感染することがあると考えられます。

集団予防接種等によるB型肝炎ウイルス感染に対する給付金制度

自分は何も悪くないのに、集団予防接種等のせいで、B型肝炎になるなんて許せない。国は何かしてくれないの?

B型肝炎訴訟をすることで、国から給付金をもらえることがあります。

ここでは、B型肝炎訴訟や、B型肝炎給付金について解説をします。

(1)B型肝炎訴訟・B型肝炎給付金とは?

B型肝炎訴訟とは、幼少期に受けた集団予防接種等における注射器の使い回しによってB型肝炎ウイルスに感染した方などが、その賠償を国に求める訴訟をいいます。

また、B型肝炎給付金とは、集団予防接種等でB型肝炎ウイルスに感染してしまった方を救済するために、国が給付するお金のことです。
ただし、B型肝炎訴訟を提起しないと、B型肝炎給付金は受け取れません。
B型肝炎給付金の金額は病態などによって異なり、最大3,600万円を受け取れます。
詳しくは、「B型肝炎ウイルス感染における給付金額の一覧」をご覧ください。

(2)B型肝炎給付金を受給するまでの流れ

B型肝炎給付金を受け取るには、次の手順が必要です。

(1)国を相手としてB型肝炎訴訟を提起する
(2)国との和解を成立させる
(3)社会保険診療報酬支払基金に対してB型肝炎給付金を請求する
なお、国と和解するためには、一定の要件を満たしていることを証明する必要があります。

【具体的な流れ】

1.裁判に提出するための資料収集
2.裁判所で国を被告とする国家賠償請求訴訟を提起する
3.和解協議手続・国との間で裁判上の和解を成立させる(和解調書の作成)
4.社会保険診療報酬支払基金にB型肝炎給付金の請求をする

(3)B型肝炎給付金の対象者

B型肝炎給付金の対象者は、次のすべての要件を満たす方です(一次感染の場合)。

  • B型肝炎ウイルスに持続感染していること
  • 満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていること
  • 集団予防接種等における注射器の連続使用があったこと
  • 母子感染でないこと
  • その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと

感染者ご本人がB型肝炎給付金を受け取らずに亡くなった場合、相続人も請求できます。

受給要件について詳しくは、「B型肝炎給付金の受給対象者【図解あり】」もご覧ください。

【まとめ】集団予防接種等でB型肝炎に感染した場合、給付金が受け取れる可能性あり

B型肝炎ウイルスの感染経路は、集団予防接種等における注射器の使い回し、母子感染、父子感染、輸血、性交渉など、さまざまです。

そのうち、集団予防接種等によりB型肝炎ウイルスに感染した方(またはその方からの二次感染者・三次感染者)は、所定の要件を満たすと、病態などによっては最大3,600万円のB型肝炎給付金を受け取れる可能性があります。

「自分は関係ないだろう」と思っていても、2025年に誕生日を迎えると、37歳~84歳になる方は、B型肝炎給付金の対象かもしれません(※一次感染の場合)。
通常の会社の健康診断(法定項目)では、B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかの検査項目が入っていないことが多いです。

そして、現在、何の症状がなくともB型肝炎ウイルスに感染していて、将来的に症状が出ることもあります。
地方自治体で、B型肝炎ウイルスの検査を行っています。無料で検査を受けられる場合もあるので、気になる方は検査を受けてみるのもよいでしょう。
肝炎総合対策に関するQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
B型肝炎訴訟・B型肝炎給付金請求に関しては、アディーレ法律事務所にご相談ください。

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この記事の監修弁護士
大西 亜希子
弁護士 大西 亜希子

社会生活において問題が生じた場合に,本当なら解決のための手段がたくさんあるにも関わらず,手段があることを知らないがために辛く苦しい思いをされている方を見てきました。ひとりで悩まず,まずは弁護士にご相談ください。依頼者の方の立場になって,問題の解決のお役に立てるよう精一杯努力いたします。

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