もらい事故とは?被害にあった際の対処方法や請求できる損害賠償

もらい事故とは?被害にあった際の対処方法や請求できる損害賠償
「赤信号で前の車に続いて停車していたら、後方から前方不注意の車に追突された」
このような場合、停車中の車は交通事故を避けようがありませんので、停車中の車に交通事故の責任はなく、追突した車が交通事故の全責任を負います。
このように、交通事故の当事者の一方に100%の責任があり、被害者には全く責任がない場合を、「もらい事故」といいます。
今回は、もらい事故について、被害にあった際の対処方法や請求できる損害賠償などについて解説します。

もらい事故とは?

2台の車両が関係する交通事故は、当事者双方に一定の過失がある場合がほとんどです。
しかし、稀ではありますが、どちらか一方に100%の過失があり、他方に過失が全くないケースもあります。このような交通事故を、俗に「もらい事故」といいます。

例えば、車両が赤信号を無視して交差点に進入し、青信号を進んで交差点に進入した車両と事故を起こしたような場合では、基本的に、赤信号を無視した車両に100%の過失があり、青信号で進入した車両に過失はありません。

このように、もらい事故は被害者に全く非がない事故とされていますので、過失割合(交通事故の当事者それぞれの責任の割合)は加害者10割、被害者0割になります。

もらい事故の被害にあった際にはどのような損害賠償を請求できる?

当事者双方に過失のある多くの交通事故では、被害者であっても過失分の責任を負いますので、被った損害全額について賠償が受けられるわけではありません。
例えば、被害者にも過失が2割ある場合、損害賠償額200万円だとすると、そこから2割40万円が自身の責任分として差し引かれ、最終的に160万円の賠償を受けることになります。
もらい事故では、被害者の過失割合はゼロですので、過失分が差し引かれることはありません。
ここでは、もらい事故で加害者側に請求できる基本的な損害賠償の項目について解説します。

(1)車両の修理費

もらい事故により、車両が破損して修理が必要となった場合には、被害者は車両の修理費を請求することができます。
ただし、修理費用は、原則としてその車両の時価額が限度となります。修理費用が車両の時価額を上回っている場合、車両の時価額の限度でしか支払いを受けることはできません。
また、部分塗装で足りるところを全体塗装する、板金修理で足りるところを部品総取り換えするなど、損害を回復するのに相当とされる程度を超える過剰な修理費用については支払われません。

(2)車両の買替差額と買替諸費用

もらい事故により車両が損傷を受けたけれども、次のように、修理費ではなく、買替差額(事故時の時価相当額と売却代金の差額)及び買替諸費用(事故車両と同種同等の車両を取得するのに要する費用)が損害賠償の対象となる場合があります。
  • 車両が事故によって物理的に修理不能である場合(物理的全損)
  • 車両が事故によって経済的に修理不能となる場合(経済的全損)
  • フレーム等車体の本質的構造部分に客観的に重大な損傷を受けて、買替をすることが社会通念上相当と認められる場合
経済的全損は、修理費用が事故当時の車両の時価額を上回る場合のことをいいます。
この場合、修理代よりも安い金額で同等の車両を購入することができますから、修理することに経済的合理性はありません。
したがって、経済的全損の場合には、修理代ではなく、車両の買替差額と買替諸費用が損害になると考えられています。

買替諸費用として認められる費用としては、買替車両の自動車取得税、消費税、自動車重量税、検査・登録法定費用、車庫証明法定費用、事故車両の廃車解体費用などがあげられます。

(3)治療関係費用

もらい事故によりケガをした場合には、ケガの治療費や病院の交通費、被害者が幼い場合は付き添い費用などを加害者側に請求することができます。
「交通事故によりケガを負った」という因果関係の証拠になりますから、被害者は、事故直後に病院を受診し、必要な検査をしてもらい、診断書などをもらっておくようにしましょう。

(4)慰謝料

人がケガをしない物損事故の場合、基本的に、被害者は加害者に対して慰謝料を請求することはできませんが、人身事故の場合は、ケガを負って受けた精神的苦痛などについて慰謝料を請求することができます。
請求することのできる慰謝料は、ケガの程度や内容などによって異なりますが、死亡慰謝料、傷害慰謝料(入通院慰謝料)、後遺症慰謝料の3種類あります。
例えば、交通事故により骨折し、入院加療したが後遺障害が残った場合には、傷害慰謝料と後遺症慰謝料を請求することができます。

休業損害

もらい事故によりケガをし、いつも通り働くことができずに収入を失った場合には、その損害を休業損害として請求することができます。
給与所得者の場合は、事故前の収入を基礎として、ケガによって仕事を休み、実際に収入が減った額が休業損害となります。
実際に収入が減らなくても、有給休暇を使用した場合はその分経済的損害を負っていると考えられますので、休業損害として認められます。

知っておきたい!もらい事故の注意点

もらい事故は、自分に事故の責任はなくても発生する事故ですので、どんなに運転に気をつけていても交通事故の被害に遭ってしまう可能性があります。
万が一に備えて、もらい事故の被害に遭ってしまった際に、知っておくと良い情報について解説します。

(1)保険会社は示談交渉に介入しない

交通事故の当事者双方に一定の過失がある場合は、加害者及び被害者の保険会社が交渉窓口になり、本人に事情を聴いて必要な資料を集め、過失割合や、損害賠償について話し合います。
しかし、被害者に過失が全くないもらい事故の場合、被害者側の保険会社は損害を負担することはありませんので、事故の処理について加害者との話し合いに介入しません。
したがって、被害者は、弁護士に依頼するなどしない限り、加害者又は加害者側の保険会社と直接示談交渉する必要があります。
専門知識のある保険会社の担当者を相手に、自分で適切な額の損害賠償額を計算し、反論し、交渉するというのは、簡単ではありません。
自身が加入する自動車保険などに弁護士費用特約がついている場合には、弁護士の費用負担を心配せずに弁護士に依頼することができますので、特約の利用を検討するとよいでしょう。

(2)加害者側が被害者の過失を主張するケースがある

加害者又は加害者側の保険会社が、起こした交通事故はもらい事故ではなく、被害者にも過失がある通常の交通事故であると主張するケースがあります。
交通事故の過失割合は、過去の判例を元に判断しており、実務では事故の態様別に過失割合について記載されている「別冊判例タイムズ38民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)が広く利用されています。
もし、もらい事故であるのにも関わらず加害者側から過失を主張された場合には、すぐに示談に応じることはせず、交通事故に詳しい弁護士に、過失割合について相談してみることをお勧めします。

もらい事故の被害にあった際の対処方法

もらい事故に遭ってしまった場合、誰しも動揺すると思いますが、落ち着いて正しい事故処理をするように心がけましょう。
事故後の対応について、時系列に沿って説明します。

(1)安全を確保して警察へ連絡

交通事故があった場合、関連する車両の運転者(同乗者も含む)は、法律上、直ちに運転を停止し、道路に生じている危険を防止するなどの必要な措置をとる必要がありあます(道路交通法72条1項前段)。これを危険防止等措置義務といいます。
また、警察官に対して、直ちに、起こしてしまった交通事故の概要について報告しなければなりません(道路交通法72条1項後段)。これを警察官への報告義務といいます。
さらに、交通事故で負傷者が発生した場合には、負傷者を救護すべき義務があります(道路交通法第72条1項)。

したがって、もらい事故の被害に遭ってしまったら、直ちに安全な場所に車を停止して、ケガの有無を確認するようにします。周囲の安全を確保したら、直ちに警察に連絡し、交通事故について説明します。
警察官が現場に着いたら、警察官の指示に従い、事情聴取に応じたり、実況見分調書の作成に立ち会ったりします。

(2)相手方の連絡先を確認する

加害者を特定するために、相手方の氏名や住所、連絡先、自動車保険の会社名や証書番号、車のナンバー、勤務中の車両であった場合は会社名と連絡先などを確認しましょう。
「保険の手続きに必要ですので、双方の連絡先を交換しましょう」と伝えれば、スムーズに情報交換できるでしょう。

(3)加入している自動車保険会社へ連絡する

自身が加入している自動車保険会社にも、なるべく早く事故に遭ったことを報告しましょう。
もらい事故である場合には、被害者側の保険会社は示談に介入しませんが、もらい事故であるかどうか、事故当時ははっきりしない場合もありますので、念のために伝えておくようにしましょう。

(4)病院へ

ケガの有無を確認するために、事故直後に病院を受診し、必要な検査をしてもらうようにしましょう。
交通事故によるケガの種類によっては、事故直後ではなく、1~3日して痛みやしびれなどの症状が現れることがありますので、無理は禁物です。
交通事故によりケガを負ったことが分かったら、病院から診断書をもらい、警察と保険会社に連絡するようにしましょう。

【まとめ】もらい事故の示談交渉や慰謝料に関するご相談はアディーレ法律事務所へ

もらい事故について、被害に遭った場合の対処方法や請求できる損害賠償について説明しました。
物損事故の場合は、賠償対象となるのは修理代や買替差額などだけですので、そこまで損害賠償額が高額になることはありません。
一方、人身事故の場合は、ケガの治療費や慰謝料、休業損害なども賠償対象となりますので、ケガの程度や後遺障害の重さによっては、損害賠償額は高額になります。
加害者側の保険会社の示談案は被害者にとって適切な損害賠償額であるとはいいがたいケースも少なくありません。
ご自身が受けた損害に対する適切な額の損害賠償を受け取るためには交通事故に強い弁護士に相談することをお勧めします。

交通事故の被害でお困りの方は、アディーレ法律事務所へご相談ください。

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この記事の監修弁護士

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

中西 博亮の顔写真
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